つれづれなる日記 @ maoo.jp

退屈な日々をより退屈な文章でだらだらと

幇助の理解を幇助される

 おそらく注目している方が多かったであろう

著作権法違反で逮捕されたWinnyユーザー2人について、Winnyを開発した金子氏がその幇助の罪にあたるとされ、起訴されたもの。

「Winny」開発者・金子勇氏、逆転無罪、大阪高裁で控訴審判決 -INTERNET Watch Watch

裁判の件であるが、本日の判決で

Winny」を開発・公開して著作権法違反の幇助罪に問われた開発者の控訴審判決で、大阪高裁は罰金刑とした一審判決を破棄、無罪を言い渡した。

Winny開発者、逆転無罪 二審・大阪高裁 - ITmedia NEWS

無罪と判断されました、と。自分は法律については素人であるが、これで開発者が幇助(ほうじょ)の罪になるというのはいくらなんでも変だろうとは考えていたわけで。
 この件に関しては、「包丁で殺人が行われた場合には包丁の開発(あるいは製造)者が犯罪者になるのか」みたいな例えが用いられることもあるようだ。今の世の中ではそんなことにはなっておらず、なるのはおかしいと自分も思う。しかし一審においては

一審・京都地裁判決は、Winny著作権侵害に利用されていることを知りながらバージョンアップを繰り返したことが、著作権侵害ほう助に当たるとして

Winny開発者、逆転無罪 二審・大阪高裁 - ITmedia NEWS

違法行為に利用されている現実があるにもかかわらず開発を継続していたことが幇助の根拠とされていたということで、しかしこれはちょっと無理矢理に思える。これが通用するのならば、「今まで多数の殺人がそれによって行われていることがわかっているのに現在も包丁の製造(あるいは販売)を継続している行為は幇助にあたる」ということにもなりかねないような気が。
 このあたりについてすっきりとよくわかる理屈が説明されており、

控訴審判決では、ソフト提供者が著作権侵害の幇助と認められるためには、利用状況を認識しているだけでは条件として足りず、ソフトを違法行為の用途のみ、または主要な用途として使用させるようにインターネット上で勧めてソフトを提供している必要があると説明。

「Winny」開発者・金子勇氏、逆転無罪、大阪高裁で控訴審判決 -INTERNET Watch Watch

これによれば「包丁のパッケージで殺人に利用することをおすすめするなどしているわけでなければ幇助にはならない」ということになるだろうし、本件においては「当該ソフトウェアを違法行為に利用させるような活動を開発者が行ってはいないから幇助にはならない」ということであろう。とても常識的な理屈と感じる。そもそも幇助って意味を考えれば当然である気もするが*1
 もちろん、当該ソフトウェアを利用して違法な行為があればそれは犯罪である。そして、世の中でそれが蔓延するようなことになれば、(できればその前に)なんらかの対策なり対処なりが必要になってくるだろうとも思う。だけどその手段は正しいものでなくてはならない。少なくともこの場合、ソフトウェアの開発者をどうこうしようなんてのはかなり間違っていたような気がするんだが、どうか。自分もソフトウェアの開発にはまるっきり無縁の人ということでもないからだろうか

「あいまいな基準で幇助罪の成立を認めれば、技術者が開発自体できなくなる」──一貫してこう主張してきたWinny開発者

Expired

少なくともこの部分の意見にはけっこう賛同している。
 望ましくないことであるとは思うけれど、仮定として「法律が変化して開発自体が幇助になると明示的に示され判断できるようなことになった」としたら、少なくとも「やるとまずいこと」がきっちりとわかることになる。その上で開発をしたなら罪となってもしかたがないとみんなが理解できそうであるわけで、そしてそういうことこそが重要なのだろう。なにをやったらまずい・まずくないというのがわからないなんて状況は、もうとんでもなくまずいわけで。だめならだめとしてはっきり制定しろ、と。
 さて、本件は地裁(地方裁判所)から高裁(高等裁判所)へときたわけだが、最高裁(最高裁判所)までいっちゃうのかどうか…。

*1:とはいえ、法律用語としての意味はまた違っているかもしれないから、まったく油断できないのだが。